これは、以前から思っていたことなんですが、改めて文章としてまとめてみたいと思います。
大学で学生にあるソフトウェアを使わせようとした時、4つの選択肢があるんじゃないかと。
- 教官が自身の研究用に使い慣れたソフトを使わせる
- 学生が将来就職するときに即戦力となるように企業が良く使うソフトを使わせる
- 大学が大学全体や学部全体で契約しているソフトを使わせる
- できるだけコストを抑えられるように無料のソフトを使わせる
これは、それぞれの大学の事情により、違ってくるんでしょう。
例えば、学生の多くが大学で教員になったり、企業の研究所に入るような大学の場合、1. の選択肢が筆頭になるでしょう。
今後、共同で論文を書いたり、共同研究をすることも視野に入れるということになります。ただ、あまりマニアックなソフトに走ると、それに使い慣れた学生は、企業に入ったときに、改めてその企業が使っているソフトを勉強することになります。
一般の企業で製品開発などを行う進路をとる学生が多い大学では、やはり、即戦力を養成できているという点が就職率に直結するので、そういうソフトになります。これが 2. の選択肢です。
企業向けのソフトは高いものが多いですが、大学用の安いもの、場合によっては「大学は無料!」のものがあるので有力な選択肢です。また、企業ではIT統制の観点から、出所がわからないソフトウェアはインストールできないことが多いため、きちっとした企業が開発したソフトでないと導入しません。
あとは、購入後に使ったときにわからないことがあれば聞くことができる、というのもフリーソフトにはないメリットです。
3. は最近減ってきているようですが、大学や学部全体で組織が契約している場合です。自分がそのソフトに「なじんでいれば」いいですが、そうでない場合は自分がそれを勉強しなければなりません(あるいは自分で追加で買うか)。
最近この形が減ってきていて、その理由は「受益者負担」というキーワードがあるためと聞いてます。つまり、「自分の研究室や授業で使っていないのに、なぜ、そのソフトの購入費を負担しなきゃならんのだ。おれは他のソフトが使いたいんじゃ~」という意見が強くなり、「実際に使う人に必要なソフトを買ってもらうほうが公平だ」ということになっているためなんでしょう。
4. は、一見乱暴に見えますが、正しい面もあります。つまり、「大学で学んだことをそのまま企業で使えるケースは少ないし、企業に入ったら、いずれにせよその企業の環境を学ぶ必要があるのだから」という論理です。分野によってはまさしくこの選択肢が正しいケースがあります。
例えば、データサイエンスなんかだと、Python(プログラミング言語は無料ですよね)を使ってデータ解析をしたり、R を使って統計処理をするのであれば、費用はかからない上に企業でも即戦力になるケースもあります。
Python なんて、Google Colaboratory を使えば、インストールすることすら不要だしね。
これは、分野ごとに見ていくと、なかなか面白いです。
ざっと思いつくところでいくと、、、
GNU Octave(Matlab ライクな計算環境)
R / RStudio(統計ソフトでは有名)
Orange(データマイニングソフト)
BIOVIA Draw(大学や官公庁、学生は無料)
ChemSketch(大学や個人使用は無料)
ParaView(可視化ソフト)
OpenFOAM(CFD [Computational Fruid Dynamics] ソフト)
GIMP [GNU Image Manipulation Program](画像 [ビットマップ] 編集ソフト)
Inkscape(画像 [線画] 編集ソフト)
QGIS(地理情報システムソフト)
GRASS GIS(地理情報システムソフト)
もっと、バイオや化学の分野ではあるんでしょうね。政府系の研究所などが研究成果としてやっているものが多いですから。
(そっか。であれば、この分野の研究者になるのであれば、フリーのほうがむしろ良い?)
なんにせよ、趣味のためであれば、無料の環境はありがたいですよね~。
問題が起きても解決を急ぐ必要もないし。
P.S.
以前に Wolfram 言語について書きましたが、企業での利用というのはどれくらいなんでしょう。研究所レベルであれば大学と似たようなものなんでしょうけど。